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第4章 損害(人身)

● 交通事故で請求できる損害

死亡事故

葬儀費用 原則として150万円。ただし,これを下回る場合は実際に支出した額
死亡による逸失利益 基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
死亡慰謝料 一応の目安
一家の支柱 2800万円
母親,配偶者 2400万円
その他 2000万円~2200万円
弁護士費用 認容額の10%程度

後遺障害事故

治療費 必要かつ相当な実費全額
入院雑費 1日につき1500円
入院付添費 医師の指示または受傷の程度,被害者の年齢等により必要があれば職業付添人の部分には
実費全額,近親者付添人は1日につき6500円。
通院付添費 症状または幼児等必要と認められる場合には1日につき3300円。
交通費 症状などによりタクシー利用が相当とされる場合以外は電車,バスの料金。
自家用車を利用した場合は実費相当額。
医師謝礼 社会通念上相当なものであれば,損害として認められることがある。
学習費・保育費・
通学付添費
被害者の被害の程度,内容,子どもの年齢,家庭の状況を具体的に検討し,学習,通学付添の必要性が認められれば,妥当な範囲で認める。
休業損害 給与所得者
事故前の収入を基礎として受傷によって休業したことによる現実の収入減。
現実の収入減がなくても,有給休暇を利用した場合は休業損害として認められる。
事業所得者
現実の収入減があった場合に認められる。
家事従事者
賃金センサス第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計,女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎として,受傷のため家事労働に従事できなかった期間について認められる。
無職者
労働能力及び労働意欲があり,就労の蓋然性があるものは認められる。
後遺障害による
逸失利益
有職者または就労可能者
基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
18歳未満の未就労者
基礎収入額×労働能力喪失率×(67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数)
将来付添費(介護費) 医師の指示または症状の程度により必要があれば損害として認める。
職業付添人は実費全額,近親者付添人は1日につき8000円。
ただし具体的看護の状況により増減することがある。
将来の治療関係費 治療費支出としての具体的な必要性・相当性,支出の蓋然性があれば認められる。
家屋・自動車等改造費 被害者の受傷の内容,後遺症の程度・内容を具体的に検討し,必要性が認められれば相当額を認める。
装具・器具購入費 必要があれば認める。
傷害慰謝料 原則として入通院期間を基礎として別表Ⅰを使用する。
むち打ち症で他覚症状がない場合は別表Ⅱを使用する。
後遺障害慰謝料 後遺障害等級による。
弁護士費用 認容額の10%程度

● 葬儀関係費用

01.葬儀関係費用とは

一般に、葬儀やその後の法要・供養などを執り行うために要する費用,仏壇・仏具購入費,墓碑建立費などが
葬儀関係費用として認められます。
香典返しは費用とは認められません。

02.いくらの賠償が認められるか

葬儀費用は原則として150万円です。
ただし,実際に支出した金額が150万円を下回る場合は実際に支出した金額のみ請求できます。

● 死亡による逸失利益

01.死亡による逸失利益とは

被害者の方が亡くならなければその後の就労可能な期間において得ることができた収入に相当する金額の賠償を得ることができます。

02.どのように計算するか

以下の計算式で計算します。

基礎収入 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数

03.基礎収入とは

(1) 給与所得者

  1. ①原則として事故前年の収入を基礎とします。
  2. ②現実の収入が賃金センサスの平均額以下の場合,平均賃金が得られる蓋然性があれば平均賃金が請求できる場合があります。
  3. ③おおむね30歳未満の方は,原則として全年齢平均の賃金センサスの平均賃金を基礎とします。
    【証拠資料】 ・源泉徴収票
    ・所得証明書

(2) 事業所得者

  • 自営業者,自由業者,農林水産業者の方は,原則として申告所得によります。
    ただし,申告額と実収入額が異なる場合は,実収入額の証明ができれば実収入額を基礎とすることができます。
  • 家族の労働などの貢献がある場合は,所得に対するご本人の寄与部分の割合によって算定します。
  • 現在の収入が賃金センサスの平均額以下の場合,平均賃金が得られる蓋然性があれば平均賃金が請求できる場合があります。

(3) 会社役員

役員報酬のうち,労働の提供の対価と見られる部分は基礎収入と認められますが,利益配当の実質がある部分は基礎収入と認められません。

(4) 家事従事者

  1. ①女性労働者の全年齢の平均賃金額が基礎収入とされます。
  2. ②職を持っている主婦の方の場合
    ・実収入が平均賃金以上のときは実収入
    ・実収入が平均賃金未満のときは平均賃金
    が基礎収入とされます。

(5) 学生・生徒・幼児等

賃金センサスの平均賃金が基礎収入になります。
女子年少者についても,女性労働者の平均賃金ではなく全労働者の平均賃金が基礎収入になります。

(6) 高齢者・年金受給者等

就労の蓋然性があれば,賃金センサス年齢別平均賃金が基礎収入になります。

(7) 失業者

  1. ①労働能力と労働意欲があり,就労の蓋然性がある場合,基礎収入が認められます。
  2. ②原則として,失業前の収入を参考にして基礎収入額を算定します。

04.生活費控除とは

(1) 意味

被害者の方が死亡した場合,ご存命であれば必要であった支出を免れることから,逸失利益の算定にあたっては被害者の方の死亡後の生活費を差し引くことになります。

(2) 生活費を差し引く方法

実際に支出を免れた生活費を個別に算出することは難しいため,一般に,次のような分類に従って一定の割合で生活費を差し引いています。

一家の支柱(世帯の生計を維持されていた方)

・扶養する方が1名 40%
・扶養する方が2名以上 30%
・女性(主婦,独身,幼児を含みます) 30%
ただし,女児の場合には45%程度と判断されます。
・男性(独身,幼児を含みます) 50%

05.就労可能年数とは

  1. ①原則として67歳まで就労が可能とされています。
  2. ②67歳を超える方は,平均余命の2分の1が就労可能年数です。
  3. ③67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる方も,平均余命の2分の1が就労可能年数です。
  4. ④年少者,学生については,18歳から就労可能とされています。

06.ライプニッツ係数とは

逸失利益は,将来長期間にわたって取得するはずだった利益を現在の一時金で支給するため, 中間利息を差し引く必要があります。実務上採用されている中間利息の控除方法がライプニッツ方式と呼ばれ,ライプニッツ方式で用いられる労働能力喪失期間に対応する係数をライプニッツ係数といいます。

労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数は以下のとおりです。

● 死亡慰謝料

01.死亡慰謝料とは

亡くなられた被害者の方ご本人の精神的苦痛を慰める賠償と,被害者の方の近親者の精神的苦痛を慰める賠償の両方があります。

02.いくらの賠償が認められるか

(1) 原則

実務上は被害者の方の家庭における地位を基本として定額化されています。 なお,この基準額には近親者の慰謝料も含まれています。

・一家の支柱(世帯の生計を維持されていた方) 2800万円
・母親,配偶者 2400万円
・独身の男女,子供,幼児 2000万円~2200万円

(2) 増額理由

次のような事情が主張立証できた場合,基準額よりも増額されることがあります。

  1. ①加害者の過失が重大であったり事故態様が悪質な場合
    飲酒運転,ひき逃げ,速度超過,信号無視,居眠り運転,無免許運転,わき見運転など
  2. ②加害者の事故後の態度が著しく不誠実な場合
    証拠の隠滅,常識に反する対応
    謝罪や見舞いをしなかった,責任を否定したというだけでは増額は認められません。

● 治療関係費

01.治療費

  1. ①必要かつ相当な実費全額が認められます。
    高額診療,過剰診療については,治療費の賠償が得られないこともあります。
  2. ②症状固定後の治療費については,原則として認められませんが,その支出が相当と認められる例外的な場合には認められることがあります。

02.鍼灸,マッサージ費用

症状により有効かつ相当な場合,特に医師の指示がある場合には認められることがあります。

03.温泉治療費

医師の指示がある場合など,治療上有効かつ必要であるときに限り認められることがあります。

04.入院中の特別室使用料

医師の指示がある場合や,特別な事情がある場合(症状が重篤,空室がなかった)に限り認められます。

● 入通院に伴い支出する費用

01.入院雑費

入院中,日用品雑貨費(寝具,衣類,洗面具など),食費,通信費などの治療費以外の支出を余儀なくされますが,その費用は1日1500円と定額化されています。定額化されているのは,各支出を個別に立証することが難しいからです。

02.入院付添費

医師の指示,受傷の程度,被害者の方の年齢などにより必要性が認められれば付添費用の賠償も認められます。 職業付添人の場合には実費全額が,近親者付添人の場合には1日6500円が認められます。 被害者の方が幼児,児童の場合には1~3割程度増額されることがあります。

03.通院付添費

症状または幼児など必要と認められる場合には通院付添費として1日3300円の賠償が認められます。

04.交通費

原則として実費全額が認められます。
ただし,タクシー代については,傷害の程度,被害者の方の年齢,駅や病院までの距離,代替交通機関の有無などを考慮して,必要性と相当性が認められた場合に認められます。

05.医師謝礼

社会常識から見て相当と認められる場合には認められることがあります。

06.学習費・保育費・通学付添費

被害者の方の被害の程度,子供の年齢,家庭の状況などから,学習,通学の付添の必要性が認められれば,妥当な範囲で認められることがあります。

● 休業損害

01.休業損害とは

休業損害とは,被害者の方が交通事故により受けた傷害の症状が回復するまでの療養期間中に休業し,または十分に働けなかったことから生まれる収入の喪失をいいます。

02.算定方法

事故前の収入の日額×休業日数

03.収入の認定方法

(1) 給与所得者

  1. ①原則として事故前年の収入を基礎とします。
    一般に,事故前3か月間の収入の平均額をとります。
  2. ②休業に伴うボーナスの減額・不支給や,昇給・昇格遅延による損失が認められる場合には,これらの賠償も得られます。
    【証拠資料】 ・休業損害証明書
    ・賞与減額証明書

(2) 事業所得者

  • ①自営業者,自由業者,農林水産業者の方は,原則として申告所得によります。
    ただし,申告額と実収入額が異なる場合は,実収入額の証明ができれば実収入額を基礎とすることができます。
  • ②家族の労働などの貢献がある場合は,所得に対するご本人の寄与部分の割合によって算定します。

(3) 会社役員

役員報酬のうち,労働の提供の対価と見られる部分は基礎収入と認められますが,利益配当の実質がある部分は基礎収入と認められません。

(4) 家事従事者

  1. ①女性労働者の全年齢の平均賃金額が基礎収入とされます。
  2. ②職を持っている主婦の方の場合
    ・実収入が平均賃金以上のときは実収入
    ・実収入が平均賃金未満のときは平均賃金
    が基礎収入とされます。

(5) 学生・生徒・幼児等

原則として休業損害は認められません。
アルバイト収入がある学生については,休業損害が認められます。

(6) 高齢者・年金受給者等

原則として休業損害は認められません。

(7) 失業者

原則として休業損害は認められません。

04.休業日数

事故日から症状固定までに現実に休業した日数をいいます。
被害者の方が一部業務に従事していた場合は,実際に制限を受けた範囲で休業が生じたと見ることになります。

05.退職したり,解雇されたりした場合

事故を原因に退職・解雇された場合,退職・解雇から症状固定までの収入減について賠償が認められることがあります。

● 後遺障害による逸失利益

01.後遺障害による逸失利益とは

被害者の方の身体に後遺障害が残り,労働能力が減少するために,将来発生するものと認められる収入の減少のことをいいます。

02.後遺障害とは

医学上一般に承認された治療方法をもってしてもその効果が期待できない状態で,かつ,残存する症状が自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状固定)に達したときに,将来においても回復が困難と見込まれる精神的または身体的なき損状態をいいます。

03.どのように計算するか

計算式で計算します。

(1) 就労者

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

(2) 若年の未就労者

基礎収入 × 労働能力喪失率 × (67歳までのライプニッツ係数-18歳までのライプニッツ係数)

04.基礎収入とは

(1) 給与所得者

  1. ①原則として事故前年の収入を基礎とします。
  2. ②現在の収入が賃金センサスの平均額以下の場合,平均賃金が得られる蓋然性があれば平均賃金が 請求できる場合があります。
  3. ③おおむね30歳未満の方は,原則として全年齢平均の賃金センサスの平均賃金を基礎とします。
    【証拠資料】 ・源泉徴収票
    ・所得証明書

(2) 事業所得者

  • ①自営業者,自由業者,農林水産業者の方は,原則として申告所得によります。
    ただし,申告額と実収入額が異なる場合は,実収入額の証明ができれば実収入額を基礎とすることができます。
  • ②家族の労働などの貢献がある場合は,所得に対するご本人の寄与部分の割合によって算定します。
  • ③現実の収入が賃金センサスの平均額以下の場合,平均賃金が得られる蓋然性があれば平均賃金が 請求できる場合があります。

(3) 会社役員

役員報酬のうち,労働の提供の対価と見られる部分は基礎収入と認められますが,利益配当の実質がある部分は基礎収入と認められません。

(4) 家事従事者

  1. ①女性労働者の全年齢の平均賃金額が基礎収入とされます。
  2. ②職を持っている主婦の方の場合
    ・実収入が平均賃金以上のときは実収入
    ・実収入が平均賃金未満のときは平均賃金
    が基礎収入とされます。

(5) 学生・生徒・幼児等

賃金センサスの平均賃金が基礎収入になります。
女子年少者についても,女性労働者の平均賃金ではなく全労働者の平均賃金が基礎収入になります。

(6) 高齢者・年金受給者等

就労の蓋然性があれば,賃金センサス年齢別平均賃金が基礎収入になります。

(7) 失業者

  1. ①労働能力と労働意欲があり,就労の蓋然性がある場合,基礎収入が認められます。
  2. ②原則として,失業前の収入を参考にして基礎収入額を算定します。

05.労働能力喪失率とは

労働能力喪失率とは,被害者の方の労働能力がどの程度低下したかを割合で示すものです。
労働能力の低下の割合については,一般に,自賠法施行令別表第1及び第2に定める後遺障害等級に応じて定められています。

その等級表は以下のとおりです。

06.労働能力喪失期間とは

  1. ①原則として就労可能な67歳までとされています。
  2. ②67歳を超える方は,平均余命の2分の1が就労可能年数です。
  3. ③67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる方も,平均余命の2分の1が就労可能年数です。
  4. ④むち打ち症の場合は,12級で10年程度,14級で5年程度に制限されることが多くあります。

07.ライプニッツ係数とは

逸失利益は,将来長期間にわたって取得するはずだった利益を現在の一時金で支給するため, 中間利息を差し引く必要があります。実務上採用されている中間利息の控除方法がライプニッツ方式と呼ばれ,ライプニッツ方式で用いられる労働能力喪失期間に対応する係数をライプニッツ係数といいます。

労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数は以下のとおりです。

● 将来要する費用

01.介護費

(1) 介護費とは

被害者の方に介護が必要となる後遺障害が残る場合の症状固定後の介護に要する費用をいいます。

(2) どのような場合に認められるか

医師の指示または症状の程度により必要性が認められるとき

(3) いつまで認められるか

原則として平均余命年数が認められます。

(4) 算定方法

日額×365日×介護期間に対応するライプニッツ係数

(5) 日額の算定

職業付添人は実費全額,近親者付添人は1日8000円が認められます。

02.将来の治療関係費

原則として,症状固定後の治療費は賠償されませんが,①いわゆる植物状態(遷延性意識障害)になったときなどで生命を維持する上で将来治療費を支払う必要性・蓋然性が認められる場合,②治療によって症状の悪化を防止する必要性が認められる場合,③症状固定後も強い身体的苦痛が残り,苦痛を軽減するために治療の必要性が認められる場合などは,症状固定後の治療費も認められることがあります。
一般に,重度後遺障害が残った場合には認められやすいと言われています。

03.家屋・自動車等改造費

被害者の方が後遺障害のためこれまで暮らしていた住居で生活を継続することが困難となって家屋を改造した場合には,改造費の賠償が認められることがあります。

例えば

車いすの移動のための玄関のスロープの設置
自宅内の段差の解消,トイレ・浴室の改造

は認められやすいといえます。

04.装具・器具購入費

被害者の方が後遺障害のために装具器具を必要とした場合,購入費用の賠償が認められます。
以下のものが認められます。

義歯,義眼,義手,義足,メガネ,コンタクトレンズ,車いす,盲導犬,電動ベッド,介護支援ベッド,エアマットリース代,コルセット,サポーター,折りたたみ式スロープ,歩行訓練器,歯・口腔清掃用具,障害者用はし,吸引機,脊髄刺激装置など

● 慰謝料

01.慰謝料とは

慰謝料とは被害者の方の精神的苦痛に対する賠償をいいます。
実務上は,症状が固定するまでの慰謝料(傷害慰謝料といいます)と,後遺障害に関する慰謝料(後遺障害慰謝料といいます)に分けて賠償が認められています。

02.傷害慰謝料

入通院期間に基づき以下の表Ⅰによって認められます。他覚症状のないむち打ち症の場合は表Ⅱによって認められます。

03.後遺障害慰謝料

後遺障害等級によって以下のとおり認められます。

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