第3章 病院との関係
● 治療費の支払方法
通常は,加害者側保険会社が病院に直接治療費を支払います。
● 健康保険の利用
交通事故の診療にも健康保険が使えます。
健康保険を利用すべき場合
加害者が任意保険に加入していない場合には健康保険を利用すべきです。
自賠責保険の場合,支払限度額が定められていますので,健康保険を使わず自由診療とすると治療費だけで相当な金額が支払われることになってしまいます。そうすると,休業補償や慰謝料が十分に支払われないことがあります。そのため,加害者が任意保険に加入していない場合は,必ず健康保険を利用して治療を受けるようにしましょう。
● 通院の頻度
症状がある場合でも通院を我慢していると,示談の際に不利になることがあります。
裁判では傷害に関する慰謝料は入通院日数を基準に算定しますが,通院日数が少ない場合や,不定期な場合は慰謝料の額が低くなるおそれがあります。また,むち打ちの場合は,通院日数が少ないと,大きな症状ではない,痛みがないなどと判断されることになり,後遺障害認定や損害賠償額の算定に不利になります。 そのため,症状がある場合は,定期的な通院を心がけるようにしましょう。
● 診断書の記載
診断書の傷病名の記載は示談や裁判で重要な意味を持ちます。
単に「頸部捻挫」「頸部挫傷」などと記載されることがありますが,診断書には症状や原因について具体的に書いてもらうようにしましょう。
● カルテの記載
後遺障害認定や症状の程度などで争いになった場合,カルテの記載は大変重要になります。
通院時に医師に症状を訴えていたとしても,そのことがカルテに記載されていないと,症状を訴えていなかったと認定されることがあります。
そのため,医師に,症状の訴えや程度をきちんとカルテに記載してもらうようにしましょう。特に,症状が他覚的なものか,自覚的なものか,可動域の制限がどの程度存在するか,痛みの程度,事故との因果関係,レントゲンやMRI検査結果の評価などをきちんと書いてもらうようにしましょう。
● 治療打ち切りの対応
通院をしていると,保険会社がある時点で治療打ち切りと言ってくることがあります。しかし,保険会社が治療打ち切りだと言ってきても主治医が治療の必要があると言えば治療は継続できます。
保険会社から打ち切りの通告があったら主治医に相談しましょう。
● 整骨院・鍼灸院への通院
いわゆるむち打ち症の場合,整形外科での治療以外に整骨院や鍼灸院に通院する場合があります。
被害者の方は,これらの施術費は当然加害者が負担すべきと考えがちですが,裁判上は医師の指示がない場合は原則として賠償は認められません。
そのため整骨院や鍼灸院への通院を考えた際は,医師に相談して,その指示を受けるようにしましょう。
● 治療機関の変更
主治医とのコミュニケーションが上手くいっていない場合は,病院の変更も検討すべきです。
なお,病院の変更は,加害者側の保険会社に事前に伝え,了承をもらっておくようにしましょう。
事前の了承がない場合,保険会社が転院先の治療費を支払わないこともありますので,十分気をつけて下さい。