第2章 保険
● 労災保険
自賠責保険,健康保険との関係
01.労災保険と健康保険の関係
交通事故が業務災害または通勤災害か否かにより労災保険が利用できるか,健康保険が利用できるか異なります。
02.労災保険と自賠責保険の支払順序
- ① 原則として自賠責保険の支払いが先に行われます。
- ② 被害者の方が労災の給付を希望した場合は労災保険の給付が先に行われます。
(注)休業補償 自賠責が先行した場合でも労災から2割の特別支給金の支払いがあります。
03.労災保険と損害賠償・自賠責保険の調整
労災保険給付を行った場合,その保険給付の価額の限度で政府が第三者に対する損害賠償請求権または保険会社に対する支払請求権を代位取得します。
そのため,被害者の方は労災給付と損害賠償を二重に受け取ることはできません。
● 自賠責保険と労災保険のメリット・デメリット
01.自賠責保険
メリット
- ① 仮払いなど事実上損害賠償の支払が速やかに行われる
- ② 慰謝料の支払いがある
- ③ 労災の療養費より治療費の対象が広い
- ④ 休業損害が全額
デメリット
- ① 被害者に重過失があると減額される
- ② 傷害の支給上限額が120万円
02.労災保険
メリット
- ① 被害者に重過失があっても全額の支給がある
- ② 加害者が自賠責保険のみで支払限度額を超えても,全額の支給がある
デメリット
- ① 慰謝料の支払いがない
- ② 休業損害の80%しか支払いがない(特別支給金加算)
「自賠責割れ」とは
自賠責では被害者の方に7割以上の重大な過失がない限り過失相殺を行いませんので,被害者の方の過失が大きいと,任意保険金の額が自賠責保険金の額を下回ることがあります。その場合,被害者の方は自賠責保険に被害者請求をしておかないといけません。
(例)死亡事故 被害者過失5割のケース 被害額 5000万円
【実際の支払額】
自賠責 3000万円(支払限度額 過失相殺なし)
任意保険 2500万円(5割過失相殺)