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法律知識「新型コロナウイルス 」

銀行借入金への対応

1.銀行借入金の問題

 

新型コロナウイルスの影響により資金繰りが悪化し、銀行借入金が約定通り弁済できない場合、これを放置してもよいのでしょうか。

 

銀行借入金について何も手続をしなければ延滞(債務不履行)となりますが、延滞状態をそのまま放置すると、

・金融機関との信頼関係が失われる(金融機関からの支援が困難に)

・期限の利益が喪失する(一括弁済の請求、預金凍結の可能性も)

・信用保証協会による代位弁済が行われる(正常な金融取引が困難に)

といった事態を招きます。

 

このような事態にまで至ると事業の継続が困難になりますので、約定弁済の資金が不足する場合は早急に何らかの対応が必要です。

 

 

2.銀行借入金の対応・流れ

 

銀行借入金の約定弁済が困難な場合、概ね以下の手順で金融機関と協議を進めることになります。

 

 (1) すぐにメインバンクに相談する

担当者に連絡し、訪問・相談をします。

新型コロナウイルスの影響により売上が減少し、資金繰りが厳しいこと、その結果約定弁済が難しいことを説明します。

 (2) リスケジュールをお願いする

リスケジュール(返済条件の変更)によって、一定期間、元金の返済を猶予してもらえないかをお願いします。

リスケジュールの詳しい内容は次の項目で説明します。

 (3) 変更契約をする

リスケジュールにつき金融機関の承諾が得られたら、金銭消費貸借契約の変更契約を行います。

これにより正式に返済条件が変更されます。

 

 

3.リスケジュール

 

リスケジュールは具体的にどのように依頼し、どのような返済条件に変更してもらうのがよいのでしょうか。

 

 (1) リスケジュールを依頼するときのポイント

リスケジュールを依頼するときのポイントは以下のとおりです。

・売上の把握・説明

売上がどれだけ減少したか(実績)、今後売上がどれだけ見込めるか(予想)を具体的な数値で把握し説明します。

・支出の把握・説明

特に固定費(人件費、家賃、その他)がどれだけ発生するかを具体的に説明します。

・資金繰りの把握・説明

以上の売上、支出の把握を踏まえて資金繰り表を作り、このまま成り行きで行ったら資金が不足すること、借入金元金の返済を猶予してもらえれば資金が維持できることを具体的に説明します。

 

経営状況、資金繰り状況をきちんと数値として具体的に把握し、それを金融機関に説明することが重要です。

自社でその作業が難しい場合には、顧問税理士に協力をお願いするのがよいでしょう。

 

 (2) リスケジュールの依頼内容

リスケジュールの依頼内容は、元金の返済猶予です。利息は支払います。

利息の支払いも難しい場合は利息の猶予や減額をお願いすることもありますが、今後の資金調達が難しくなる可能性があるので、これはやむを得ない場合の最終手段と考えておきましょう。

 

元金返済猶予の期間については、新型コロナウイルスの終息時期や需要回復の時期が見通せないことから、1年程度の猶予をお願いするのがよいのではないでしょうか。

 

 (3) 再度のリスケジュール

新型コロナウイルスの影響を受ける前からリスケジュールをしている場合、再度リスケジュールを受けられるか気になるところではありますが、リスケジュール中であることだけを理由に再度のリスケジュールを拒否されることはありません。

ケースバイケースではありますが、金融機関も柔軟に対応してくれていますので、まずは金融機関に相談してみるのがよいでしょう。

 

 

4.金融機関との協議のポイント

 

金融機関との協議では以下の点に気をつけるようにしましょう。

 

 (1) 誠実性

売上や経費などの数値はきちんと把握し、説明します。

金融機関からの質問には、適時適切に回答します。

当然ですが、金融機関には虚偽の説明をしてはいけません。

誠実性をもった対応が求められます。

 

 (2) 透明性

経営や資金繰りの状況は適時適切に開示し、透明性をもった経営・協議を行うようにします。

 

 (3) 公平性(衡平性)

複数の金融機関から借入がある場合、全ての金融機関に同じ情報を開示し、説明します。

また、同じ条件でのリスケジュールをお願いします。

複数の金融機関から借入がある場合、個別協議ではなく、バンクミーティングの開催も検討します。

 

 

5.リスケジュールの実情

 

新型コロナウイルスを原因としたリスケジュールの実情については、金融庁と中小企業庁のウェブサイトで公表されています。

金融機関の種類ごとの対応実績(令和2年3月10日から3月末まで)は以下の図のとおりです(単位:件)。

 

【図】銀行

令和2年4月30日付(令和2年5月15日更新)金融庁公表資料https://www.fsa.go.jp/ordinary/coronavirus202001/kashitsuke/20200430.pdfをもとに作成

 

【図】協同組織金融機関

令和2年4月30日付(令和2年5月15日更新)金融庁公表資料https://www.fsa.go.jp/ordinary/coronavirus202001/kashitsuke/20200515.pdfをもとに作成

 

【図】政府系金融機関

令和2年4月30日付中小企業庁公表資料

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/shikinguri/kashitsuke/2020/202003.pdfをもとに作成

 

 

上の図を見ると、多くの申込み案件でリスケジュールが実行されていることが分かります。

 

また、金融機関の個別の対応事例についても金融庁の公表資料に掲載されています。こちらもご参照ください。

◆令和2年4 月 20 日付金融庁公表資料(新型コロナウイルス感染症を踏まえた金融機関の対応事例)

https://www.fsa.go.jp/news/r1/ginkou/20200420/01.pdf

 

 

6.金融機関交渉が難航する場合

 

多くの案件でリスケジュールが実行されてはいるものの、複数の金融機関から借入があり、金融機関間で意見が一致せずに調整が難航するケースもあります。

 

そのような場合、金融機関交渉の経験がある弁護士に相談するほか、中小企業再生支援協議会の「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」を活用する方法もあります。

 

◆新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/2020/200406saisei_tokurei.pdf

 

この特例リスケジュールでは、中小企業再生支援協議会が金融機関調整を支援してくれますので、複数の金融機関から借入があり、その調整が難航している場合は一つの選択肢として検討するのがよいでしょう。

 

いずれにせよ、金融機関との協議が難航した場合、どのような方法をとるかを含めて専門的な検討が必要になりますので、お早めに当事務所までご相談ください。

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